food function and safety

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2011/11/04 『無添加はかえって危ない』(本の紹介20)

今回紹介するのは、『無添加はかえって危ない 誤解だらけの食品安全、正しく知れば怖くない』(有路昌彦著, 日経BP, \1680, 2011/8)です。食品添加物を使っていない「無添加」食品を好む消費者が、日本では多いと言われています。しかし、食品添加物は無意味に使用されているわけではなく、明確な目的があります。とくに、腐敗や変質を防ぐために添加されているものは、食品の安全性を確保するために重要な役割を担っています。



「無添加食品」を評価するためには、そのリスクを適正に分析する必要があります。リスクとは、「損失(ハザード)の大きさにその発生確率を掛けたもの」です。無添加食品にすることによって、かえって食中毒のリスクが高まるといったこともあり得ます。無添加の与える奇妙な「安心感」が、実は「安全性」を損ねているかもしれません。本書は、「食品のリスク」という重要な概念を理解するための好著だと思います(目次は下記)。

  • 第1章 無添加オンパレードの真相
  • 第2章 食品添加物が嫌われるのはなぜ?
  • 第3章 食品添加物のリスクはどのくらい?
  • 第4章 食品添加物を使うベネフィットがあるから
  • 第5章 「無添加こそが危ない」現実
  • 第6章 “損する”無添加
  • 第7章 リスクコミュニケーションが無添加問題を解決する

食品添加物の問題は、現在議論されているTPP(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement, 環太平洋戦略的経済連携協定)においても、実は重要な部分です。ここでは詳しく述べませんが、食品添加物に加えて、遺伝子組み換え食品やポストハーベスト農薬もTPPで危惧される問題です。いずれも食品のリスクという観点から、しっかりと議論する必要があります。

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