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2012/01/11 『創薬科学入門』(本の紹介29)

今回紹介するのは、『創薬科学入門 薬はどのようにつくられる?』(佐藤健太郎著, オーム社, \2100, 2011/11)という本です。1990年代には大型医薬品が次々と登場しましたが、今日、新たに承認される新薬の数は非常に少なくなっています。本書によると、最近は年間わずか十数種類の新薬しか世に出ていないとのことです。世界の製薬企業が巨額の研究資金を投じていることを考えると、創薬が非常に難度の高い仕事になったことがうかがえます。「医薬品を創り出すことは、ノーベル賞を獲るのと同じくらいむずかしい」という話もうなずけます。



このような状況のもとで、医薬品の研究開発アプローチも大きく変貌しつつあります。本書では、最新の創薬科学がわかりやすく解説されており、新薬誕生のプロセスを理解することができます。医薬品を主題としている本ですので、どうしても化学構造式が多く出てきます。しかし、あまり気にせずに読み進むこともできますので、化学嫌いな方でも受け入れられる本だと思います。一方で後半の各章では、医薬品カテゴリー別にある程度詳しく創薬の現状が解説されているので、幅広い読者に役立つ内容が盛り込まれています。随所に挿入されているコラムにも、特許制度など創薬に関連した話題が取り上げられており、本書の魅力を高めています。以下に本書の目次をあげておきます。

  • 第 1章 医薬とは何か
  • 第 2章 医薬が世に出るまで
  • 第 3章 医薬のベストバランス
  • 第 4章 創薬を支える技術
  • 第 5章 天然物からの創薬
  • 第 6章 プロセス化学
  • 第 7章 抗体医薬とゲノム創薬
  • 第 8章 抗生物質と抗ウイルス薬
  • 第 9章 高血圧治療薬
  • 第10章 高脂血症治療薬
  • 第11章 変容する抗がん剤の科学
  • 第12章 糖尿病治療へのさまざまなアプローチ
  • 第13章 精神病治療薬
  • 第14章 鎮痛剤
  • 第15章 新薬開発への挑戦

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