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2012/11/06 『大村智』(本の紹介69)

長く北里研究所の所長をされていた大村智先生(北里大学名誉教授)は、先日、文化功労者となられました。今回紹介するのは、『大村智 ―2億人を病魔から守った化学者』(馬場錬成著, 中央公論新社, \, 2012/2)という本です。大村先生は、微生物の生産する有用物質の探索を続け、450を超える新規物質を発見されました。そのひとつに、抗寄生虫物質であるエバーメクチンがあります。エバーメクチンから開発されたイベルメクチンは、オンコセルカ症(河川盲目症)やリンパ系フィラリア症といった熱帯病に著効を示し、中南米やアフリカで毎年約2億人の人々に投与され、これらの感染症を撲滅寸前まで追いやっています。



本書には、大村先生の発見されたエバーメクチン、セルレニン、ラクタシスチンといった著名な化学物質が登場し、これらの研究にまつわる実に興味深い数々のエピソードが紹介されています。また、研究経営という視点で取り組んだ独立採算制の研究室運営の話にも、その見事な手腕に驚かされました。研究者を目指す若い方々にも読んでいただきたい一冊です。

以下に本書の目次を載せておきます。

  • 第 1章 自然と親しんだ小学生時代
  • 第 2章 スポーツに明け暮れた青春時代
  • 第 3章 高校教師から研究者に転身
  • 第 4章 北里研究所に入所して鍛えられる
  • 第 5章 アメリカの大学での研究生活
  • 第 6章 企業から研究費を導入して研究室を運営
  • 第 7章 エバーメクチンの発見
  • 第 8章 大村研究室の独立採算制
  • 第 9章 研究経営に取り組む
  • 第10章 活発な研究活動と外国での評価
  • 第11章 北里研究所メディカルセンター病院の建設
  • 第12章 北里研究所とコッホ研究所
  • 第13章 科学と芸術の共通性から女子美術大学の理事長へ
  • 第14章 人材育成で社会貢献する大村研究室の活動

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