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2013/02/25 『パンデミック新時代』(本の紹介82)

今回紹介するのは、『パンデミック新時代 人類の進化とウイルスの謎に迫る』(ネイサン・ウルフ著, 高橋則明訳, NHK出版, \2310, 2012/12)という本です。帯には、「ウイルス界のインディー・ジョーンズが行く!」と書かれていますが、本書を読むとこのコピーがうなずけます。3回のマラリア発症を経験するなど、命がけの研究活動を続けている様子が生々しく伝わってきました。スタンフォード大学の生物学教授であるウルフ氏は一流の研究者ですが、ナショナル・ジオグラフィック誌の「新進探検家賞」を受賞するなど幅広い活動が注目されています。



「パンデミック」とは、感染症の世界的(爆発的)流行のことで、過去の事例としては1919年のスペイン風邪などがあげられます。本書では、パンデミックにおける人間と動物の接触の重要性が詳述されていますが、動物資源(畜産)に関わる者は知っていなければならないことです。畜産の形態がこの数十年の間に劇的に変わり、大規模な工業畜産が展開したことがパンデミックの発生につながることは大いに考えさせられます。ペットの輸出入の増加もまた、パンデミックの危険性を高めています。動物が食用あるいはペットとして移動すると、新しい微生物に感染する可能性を高くなるという大原則を、私たちは常に意識する必要があります。本書を読んではじめて、パンデミックの仕組みや本当の怖さがわかりました。また、ウイルスについての関心や予備知識が乏しい私のような読者が理解できるだけではなく、その内容に惹きつけられるというのも驚くべきことです

以下に、本書の目次をあげておきます。

  • 第一章 ウイルスに満ちた星
  • 第二章 狩りをする類人猿
  • 第三章 微生物の大規模なボトルネック
  • 第四章 ウイルスを攪拌する
  • 第五章 最初のパンデミック
  • 第六章 ひとつの世界
  • 第七章 親密な種
  • 第八章 ウイルスの襲撃
  • 第九章 ウイルスハンター
  • 第十章 微生物予測
  • 第十一章 やさしいウイルス
  • 第十二章 最後の疫病

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